チェリオの思い出
私が小さかったころ、うちは、あんまり裕福ではなかった。
そんなわけで、自動販売機の飲み物を買う…というのは、「ものすごく贅沢なこと」扱いで、家族で出かけるときには水筒を持っていた。おにぎりやお弁当も持参。
観光地で食べるソフトクリームや、名物とは、かなり無縁だった。「あんなの、もったいない」というのが母の口癖。
水筒というのは、円筒形のボトルっぽいのが流行ったのは私が小学生になってからで、それまでは水筒というのは、丸くて平らな形か、湯たんぽみたいな楕円形で、フタがコップになっていて、肩紐がついているものに限られた。
さすがにそれはカバンに入れておくのには向かないので、親が持っているのは円筒形のタッパー。フタがほんっとに固くて、親があけてくれるのでなければ、自分でフタにかみついてこじ開けるしかない…というような(噛むと、フタが傷むので怒られたが)もので、それも、「あるだけしかない」のだから、好きなだけ飲むなどということは許されなかった。
なくならないように少しずつ飲むのである。正直、今考えると水分補給的に大丈夫だったんだろうか…と思う。
まあ、当時には、公園だの、駅だのには「水飲み場」というものがあって、下から水が出てくる蛇口があり、そこの水はぬるかったりおいしくなかったりするが、安全な水が飲めるというのもあったっけ。
私が、そのチェリオのことを覚えているのは、滅多にない「バス旅行」で、山に登ったときだ。祖母も一緒で、こうなると断然、ジュースやお菓子が買ってもらえる確率は上がる、そんな真夏のおでかけの時のこと。
もう、どこの山だったのか全く覚えがないが、多分、バスツアーで、リフトがあったので、冬はスキー場、夏はなんとか高原扱いで、観光地になる山。
自動販売機に人が並んでいた。暑い日で、水筒のお茶が切れたが、下山のバスの集合までには、まだ時間があった。
「こんな高いの、買ってやらなくてもいい、我慢させる」という母を押し切って、祖母が私たちに自販機のジュースを買ってくれるというのだ。値段はたぶん、山の上だったのだから、100円ではなかったのだろうな。覚えていない。
姉は、イチゴ味のチェリオを買った。
私はその隣の、緑と黄色のパッケージだったレモン味チェリオのボタンを押そう…と思ったら、
「そんな酸っぱいの、買っても飲まないでしょう?」
…と母の声。
実は、私はそれがすっぱいとか全然思っていなかった。キリンレモンは飲めたし、レモンスカッシュだって飲んだことがある。何がいけないのか、本当にわからなかった。
正直、大変のどが渇いていたのだ。酸っぱかろうが、甘かろうが、ただの水だろうが、私は気にせず飲んだだろう。
「どうせ飲めないって」
私は、結局レモンのチェリオを買ったのだが、いかんせんまだ4歳か、5歳。不慣れなプルトップが自分で開けられなかった。
「どうせ飲めないのに、なぜ買うのよ?」
祖母が、がみがみ言われている私を気遣って、
「まこ、こっちを飲んだら?」
…とイチゴのチェリオをもう1本、買ってくれた。
しょうがない…これはもうどうしようもないのだ。
母の手によって、レモンのチェリオはなんと、ごみ箱へ捨てられてしまった。
私は黙って、イチゴのチェリオを飲みながら、なんてもったいない…。という気持ちをかみしめたのだった。
今考えても、理不尽だし、私は多分、レモン味平気だったし、たとえそれが身震いが出るほど酸っぱかったとしても、「これは自分で選んだのだから、しょうがない」と思って飲んだと思う。
子供の判断力が信用できなかった…ということなのだろうけれども、もったいないのと天秤にかけて、飲ませてくれればよかったのになあ…。
そんなわけで、チェリオをそのあとも見かけたのだけれど、近所に売っているチェリオは瓶にはいっていて、缶のものはついぞみかけなかった。それと、レモン味も、途中でなくなったらしく、飲めないまま、今に至る。
だから、私は、今のところ息子がどんなにへんてこりんな飲み物を選ぼうと、黙ってみていることにしている。
ドリンクバーを混ぜるのも。「ドリンクバーは、持ってきた飲み物は全部飲むのがルール」とだけ。
一応、混ぜたことのある経験者として、「コーヒーお茶系と、フルーツ系を混ぜるのはたいてい地雷よ?」ということはアドバイスしておいた。
この前、スーパーで「史上最強の酸っぱさ」だという、三ツ矢サイダーのグリーンレモンソーダ(当社比6倍のクエン酸量)というものを飲んだのだけれど、全然平気だったので、記念にこれを書くことにした。
そんなわけで、自動販売機の飲み物を買う…というのは、「ものすごく贅沢なこと」扱いで、家族で出かけるときには水筒を持っていた。おにぎりやお弁当も持参。
観光地で食べるソフトクリームや、名物とは、かなり無縁だった。「あんなの、もったいない」というのが母の口癖。
水筒というのは、円筒形のボトルっぽいのが流行ったのは私が小学生になってからで、それまでは水筒というのは、丸くて平らな形か、湯たんぽみたいな楕円形で、フタがコップになっていて、肩紐がついているものに限られた。
さすがにそれはカバンに入れておくのには向かないので、親が持っているのは円筒形のタッパー。フタがほんっとに固くて、親があけてくれるのでなければ、自分でフタにかみついてこじ開けるしかない…というような(噛むと、フタが傷むので怒られたが)もので、それも、「あるだけしかない」のだから、好きなだけ飲むなどということは許されなかった。
なくならないように少しずつ飲むのである。正直、今考えると水分補給的に大丈夫だったんだろうか…と思う。
まあ、当時には、公園だの、駅だのには「水飲み場」というものがあって、下から水が出てくる蛇口があり、そこの水はぬるかったりおいしくなかったりするが、安全な水が飲めるというのもあったっけ。
私が、そのチェリオのことを覚えているのは、滅多にない「バス旅行」で、山に登ったときだ。祖母も一緒で、こうなると断然、ジュースやお菓子が買ってもらえる確率は上がる、そんな真夏のおでかけの時のこと。
もう、どこの山だったのか全く覚えがないが、多分、バスツアーで、リフトがあったので、冬はスキー場、夏はなんとか高原扱いで、観光地になる山。
自動販売機に人が並んでいた。暑い日で、水筒のお茶が切れたが、下山のバスの集合までには、まだ時間があった。
「こんな高いの、買ってやらなくてもいい、我慢させる」という母を押し切って、祖母が私たちに自販機のジュースを買ってくれるというのだ。値段はたぶん、山の上だったのだから、100円ではなかったのだろうな。覚えていない。
姉は、イチゴ味のチェリオを買った。
私はその隣の、緑と黄色のパッケージだったレモン味チェリオのボタンを押そう…と思ったら、
「そんな酸っぱいの、買っても飲まないでしょう?」
…と母の声。
実は、私はそれがすっぱいとか全然思っていなかった。キリンレモンは飲めたし、レモンスカッシュだって飲んだことがある。何がいけないのか、本当にわからなかった。
正直、大変のどが渇いていたのだ。酸っぱかろうが、甘かろうが、ただの水だろうが、私は気にせず飲んだだろう。
「どうせ飲めないって」
私は、結局レモンのチェリオを買ったのだが、いかんせんまだ4歳か、5歳。不慣れなプルトップが自分で開けられなかった。
「どうせ飲めないのに、なぜ買うのよ?」
祖母が、がみがみ言われている私を気遣って、
「まこ、こっちを飲んだら?」
…とイチゴのチェリオをもう1本、買ってくれた。
しょうがない…これはもうどうしようもないのだ。
母の手によって、レモンのチェリオはなんと、ごみ箱へ捨てられてしまった。
私は黙って、イチゴのチェリオを飲みながら、なんてもったいない…。という気持ちをかみしめたのだった。
今考えても、理不尽だし、私は多分、レモン味平気だったし、たとえそれが身震いが出るほど酸っぱかったとしても、「これは自分で選んだのだから、しょうがない」と思って飲んだと思う。
子供の判断力が信用できなかった…ということなのだろうけれども、もったいないのと天秤にかけて、飲ませてくれればよかったのになあ…。
そんなわけで、チェリオをそのあとも見かけたのだけれど、近所に売っているチェリオは瓶にはいっていて、缶のものはついぞみかけなかった。それと、レモン味も、途中でなくなったらしく、飲めないまま、今に至る。
だから、私は、今のところ息子がどんなにへんてこりんな飲み物を選ぼうと、黙ってみていることにしている。
ドリンクバーを混ぜるのも。「ドリンクバーは、持ってきた飲み物は全部飲むのがルール」とだけ。
一応、混ぜたことのある経験者として、「コーヒーお茶系と、フルーツ系を混ぜるのはたいてい地雷よ?」ということはアドバイスしておいた。
この前、スーパーで「史上最強の酸っぱさ」だという、三ツ矢サイダーのグリーンレモンソーダ(当社比6倍のクエン酸量)というものを飲んだのだけれど、全然平気だったので、記念にこれを書くことにした。
コメント
こんにちは!
おはよう
裕福ですか。
裕福ってのも価値観が人によって違ってたりしますからねぇ。
一般的ラインだとどこからが裕福なんだろうね(・。・)
まぁ、欲しいって思ったりしたのを我慢するのも大変だよね。
裕福ってのも価値観が人によって違ってたりしますからねぇ。
一般的ラインだとどこからが裕福なんだろうね(・。・)
まぁ、欲しいって思ったりしたのを我慢するのも大変だよね。
読んでて切ないです。ゴミ箱に捨てられたときの、まこさんの気持ちを思います。
自分が子供の頃、水筒はやっぱりフタがコップになっている円柱か、湯たんぽみたいなタイプでしたよ。
周りも同じだったような・・・だから、金持ちとか、貧乏とか、関係ないような?
でも、私とでは時代が違うからかな?
周りも同じだったような・・・だから、金持ちとか、貧乏とか、関係ないような?
でも、私とでは時代が違うからかな?
taishoさんへ
夜店の食べ物に対するそのコメント、うちの親と姉妹かと思ったぐらい、おなじでした(笑)。
でも、それでも…子供の頃はわたあめが魔法の味なんですよね。リンゴ飴も、デートするようになるまで、食べなかったっけ…なんて。
ちなみに、うちの息子には、「くじ引きで、一番下の商品が当たっても、うれしいなら、買いなさい」というルールにしてます。一番下が当たっても、楽しかったね、とニコニコ出来るぐらいそれがほしければやってもいいよ、と。
夫は、俺はそんなことにお金を使う意味が分からん、といいますが、私はガチャを1回は、やる派なので。
でも、それでも…子供の頃はわたあめが魔法の味なんですよね。リンゴ飴も、デートするようになるまで、食べなかったっけ…なんて。
ちなみに、うちの息子には、「くじ引きで、一番下の商品が当たっても、うれしいなら、買いなさい」というルールにしてます。一番下が当たっても、楽しかったね、とニコニコ出来るぐらいそれがほしければやってもいいよ、と。
夫は、俺はそんなことにお金を使う意味が分からん、といいますが、私はガチャを1回は、やる派なので。
よしおさんへ
自動販売機から出てくるジュースは、そんなわけで、買ってもらったのを覚えていても、観光地が正確にどこだか覚えていない状態に(笑)。
観光地に連れて行かれた思い出はほとんどが食べ物と飲み物の思い出です。
観光地に連れて行かれた思い出はほとんどが食べ物と飲み物の思い出です。
きたあかりさんへ
本気でもったいないと思ったのですよ、滅多に手に入らない宝物状態なのにね。本当にもったいないなら飲ませてくれればよかったのに。
「私のことを思って」と後で言われるんですが、正直なところ、こんなもの子供に体験させて覚えさせればいいんですよねえ。
みんな微妙な味の飲み物をそうやって覚えていくんですから。
息子は、「フルーツパンチ味」に最近手を出さなくなりました。名前が素敵な割に気に入らない味だと見極めをつけたようです。
「私のことを思って」と後で言われるんですが、正直なところ、こんなもの子供に体験させて覚えさせればいいんですよねえ。
みんな微妙な味の飲み物をそうやって覚えていくんですから。
息子は、「フルーツパンチ味」に最近手を出さなくなりました。名前が素敵な割に気に入らない味だと見極めをつけたようです。
鬼瓦さんへ
水筒のお茶は、多分貧乏人もお金持ちも、持っていたでしょうけれども、なくなったあとの対処が違うんですよね。お金がある家は自動販売機か、売店で買う。お金がないうちは、水道があれば飲むか、我慢する。
小さいとき、神社の手を洗うところで、水を飲んじゃったコト、結構あります。
小さいとき、神社の手を洗うところで、水を飲んじゃったコト、結構あります。
わたしも小さいころ、テキ屋さんのやるお祭りで、
綿菓子は「あれは高すぎる、ふくろ代だから」
りんご飴は「あんな大きいの食べきれないよ」
などと全部ダメ出しされてました〜
まあ、そういう時代だったのかも(汗)
なので、わたしはお祭りに行ってもあんまり(努力して)そういうことを言わないように頑張ってるのですが、
1回500円のくじを2回も引く次男‥(しかも、当たるのは飾られてるオモチャじゃなく単価50円くらいのガラクタ‥)
やっぱり一言言いたくなりますが、グッと我慢。くじ引きたいんだよね、ママもガチャ好きだからわかるわ(汗)となります。