源氏物語の解説本 吉屋信子

底本が、谷崎潤一郎や、与謝野晶子が訳したときに使ったのと同じ「湖月抄」で、それをおばあちゃんが孫たちに話して聞かせる…という感じに書いてある。
読み進めていくとわかった。これは一言で言うなら、「読む朝ドラ」だ。
舞台は第二次世界大戦の末期からスタート。しゃきしゃきしたおばあさんの楓刀自と、三姉妹で、若くして戦地に夫があって消息不明の若奥様、長女の藤子、病弱でそんなに命が危ないほどでもないが療養中の次女の容子、高校生ぐらいの末っ子三女の鮎子と、近所に住むビジネスウーマンで商売はやり手ではあるものの、学がないのが残念と思っている未亡人の大貝夫人が登場人物。
そのおばあさまが、源氏物語の「だいたいのところをわかりやすく」その4人に解説するのを一帖ずつ聞くのがドラマの1回ずつにあたる。一帖分終わったら、「今日はおしまい」ってなって、雑談をしたりする描写もあったり、行方がはっきりしなかった三姉妹の両親や、長女の夫の話なんかもだんだん分かって、大貝夫人の身の上なんかも少しずつ解き明かされていく。
お茶を飲みながら解説するおばあちゃんに、「ええ?そんなのひどい!浮気者!」とか突っ込む高校生の鮎子ちゃんや、「今も昔も、女なんて大体そうなるんだから…」とあきれる大貝夫人が、またいい味を出していて、特にこの未亡人、源氏物語のことなんか全然知らなくて、おばあちゃんが持っていた写本が「紫式部の書いた原本」だと思ってしまうようなかわいいところがあって、全く古典なんかには明るくない人も、つられて話を聞いてしまうような、そういうお茶の間のドラマを見ているような気分になる面白い本だった。
ただ、最後のほうが結構駆け足で、光源氏がなくなったところまでは結構ゆっくりだったのに、残りの宇治十帖は、講義を聞いていた容子ちゃんが取ったノートはこうなっている、というような感じで要点だけささっとなぞって終わりになっているので、そこは残念。
第二次世界大戦直後というとかなり昔なので、そのあたりのことが現代の人にはわかりにくいところもあるが、平安時代よりはもちろんわかりやすい。底本が江戸時代のものらしいから、明治時代の人である楓おばあちゃんにはそれなりに読めたのだろうが、孫の三姉妹にはほとんどわからず、熱心にノートを取って見比べる容子ちゃんでも「なんとなくしか」わからなかったりする…と書かれているのがかわいい。
「あさきゆめみし」のようなマンガが出る前どころか、現代語訳が与謝野訳か、谷崎訳しかなかった頃なら、この解説書はかなり一般向けでありがたかっただろうと思う。ちなみに初出は女性向けの雑誌の昭和26年から、29年の連載だったそうだ。
明かりの下で火鉢と座布団と座卓をだして、一張羅を着て「お講義」をする、しゃんとしたおばあさまが目に浮かんで、こういうお習字の先生いたな…とか思い出した。小さな町で、子どもにお習字を教えている先生には時々こういうおばあちゃまがいたものだ。やけにお行儀にうるさく、それがまた親御さんに評判が良かったりして、昔は女学校の先生だった、なんて言われていた。
田辺聖子さんの講義の本のほうがずっと現代風だが、こっちも雰囲気があってよかった。
ただ残念なことに現在新品はもうアマゾンでは買えない。図書館で借りるしかない。
また一度、与謝野晶子の訳を読み直して源氏ブーム終了にしようかな。
それとも、瀬戸内寂聴さんの訳とか、違う人のを読もうか、悩むところだ。
コメント
みけさんへ
つまりはロマンス小説ですものね。当時の流儀とはいえ、恋愛にはやっぱり私たちが共感できるところがあると思います。
まあ、後半はあんまりぴんとこないな、と思うので、そこだけ後世の人が書いたという話があったりするのもなるほど、と思いますが。
光源氏が亡くなったところは題名しかないとか、演出なのか、それとも噂では「その巻を読んで、後追い自殺をする人が出たので禁書になって散逸した」とか言われていたり。ベストセラーだったんだというのがわかる感じなのがいいです。
まあ、後半はあんまりぴんとこないな、と思うので、そこだけ後世の人が書いたという話があったりするのもなるほど、と思いますが。
光源氏が亡くなったところは題名しかないとか、演出なのか、それとも噂では「その巻を読んで、後追い自殺をする人が出たので禁書になって散逸した」とか言われていたり。ベストセラーだったんだというのがわかる感じなのがいいです。
小公子
わたしも訳にこだわります♪
河出書房の川端康成翻訳はセディです。「大好きなママ」がなれなくて戸惑いましたが、ほかより良いと思っています。
川端康成の小公女はすごくいいです、高橋方子さんのも甲乙つけがたく良かった。
海底二万里など「マイル」だけで敬遠、船長とか親分だと閉じてしまいます。
翻訳に感激したのは「パーラ」言葉遊びを言葉遊びで訳している、ハリポタの後だったせいか日本語の熟達差がひしひしと・・。
と言うわけで私も同タイトル本に浸っています。
今は家なき娘、前後ひっくり返して読むのでできれば紙本が良いです。
西条八十で十分ですが、古い津田さんのを自分で新仮名使いにしたいです。二宮さんのはちょっと違和感があるので。(でも悪くないです)
と、書き始めたら楽しく止めどもなくなってすみません。
河出書房の川端康成翻訳はセディです。「大好きなママ」がなれなくて戸惑いましたが、ほかより良いと思っています。
川端康成の小公女はすごくいいです、高橋方子さんのも甲乙つけがたく良かった。
海底二万里など「マイル」だけで敬遠、船長とか親分だと閉じてしまいます。
翻訳に感激したのは「パーラ」言葉遊びを言葉遊びで訳している、ハリポタの後だったせいか日本語の熟達差がひしひしと・・。
と言うわけで私も同タイトル本に浸っています。
今は家なき娘、前後ひっくり返して読むのでできれば紙本が良いです。
西条八十で十分ですが、古い津田さんのを自分で新仮名使いにしたいです。二宮さんのはちょっと違和感があるので。(でも悪くないです)
と、書き始めたら楽しく止めどもなくなってすみません。
「源氏物語」は
その昔 授業でしてた時も
なんだか 面白いなと思ったものでした。
大和和紀さんの
「あさきゆめみし」も
ハマってたなぁ…と
遠い記憶が 蘇りました(^^ゞ
吉屋信子さんの本
面白そうですね(〃゚∇゚〃)
まこさんの感想お聞きしてたら
読みたくなってきました♪