「町から来た少女」 ヴォロンコーワ
この本と出会った時、私は小学校3年生だった。私の家の向かいのおうちのお姉さんが高校生になるにあたって、お部屋の整理をした時にもう読まないから、「まだ小学生のまこちゃんと、お姉ちゃんにどうですか?」と、持ってきてくださったものだった。
本!自分のにしていい本。すごくうれしかったし、これは一緒に来た「二人のロッテ」や「風にのってきたメアリーポピンズ」と違って、自分が知らないお話だった。
戦争で町が敵軍に攻撃され、身寄りを失った少女が田園地帯へと避難してくるときに、農村の家族に引き取られる話なのだが、これは町と農村部がすごく離れていて、生活スタイルが全く違うとお互い思われていた時代のロシアで、農村部では戦争は遠い場所のことでしかなく、羊を育て、麦をまき、手堅く暮らしている様子が書かれている。
ロシアの政治体制が、社会主義がどうこうというのは全く当時は気にしていなかったが、やっぱりロシアものの児童文学は社会主義下で書かれたものが多くて感情移入しにくいからか、人気がないのかもしれず絶版。「ヴィーチャと学校ともだち」とか面白いものもあると思うし、これもなかなかにいい物語だと思うのだけれど。
ペチカのある家でサウナを使ったり、サモワールから熱いお茶をついだりする、寒いロシアならではの記述が楽しくて、農村を知らない人がいいなあ…と思うようなところがたくさんある。大草原の小さな家の農家の暮らしが好きな人なら、これも楽しめると思う。
で、これを久しぶりに読みたくなったのだが、かなり見つかりにくくなっていた。
まず私が読んだのは岩波の高杉一郎さん訳のものだが、ほかでも数回は訳されていることがわかった。どうも学研の出版社から出ていたらしい「少年少女世界文学全集」の5巻が「ヴィーチャと学校ともだち」と、「町からきた少女」の合本らしい。これは宮川やすえさん訳。
図書館の資料検索で見つかったのが講談社の「少年少女世界文学全集」のロシア編(4)で、「連隊の子」「町からきた少女」「金どけい」の3編の合本。。「町からきた少女」は袋一平さんという人の訳だった。
岩波少年文庫のは見つからないから、とりあえずこれでいいや、と取り寄せて読んでみた。違和感があるのはしょうがない。
うーん、一度読んだら、余計読み慣れたのが読みたくなった。
「町からきた少女 岩波」と検索条件から「少年文庫」を落としてみた。
すると、やたらと「二人のロッテ」がひっかかる。
えーっと…ふたりのロッテはいいのよ、あれはどこでも読めるし、まだ売ってるから。いい本だけど、好きだけど!そして私が読んだのも岩波のだけども。あれは時々映画化するし、今の子どもたちが読んでもそれなりに面白いからねえ。多分これからも買えるだろう。
…と思ったらば、「岩波少年少女文学全集」 の20巻が、「二人のロッテ」「町からきた少女」の合本だった。
図書館で調べなおしたら、「ふたりのロッテ」がまず来て、同時収録のところの副題のように「町からきた少女」が入っていて、簡易検索ではかかってくれないらしいということのようだった。
この岩波の全集は図書館には多分あるところが多いだろう。つまり、学研の全集では「ヴィーチャと学校ともだち」に、岩波では「ふたりのロッテ」に隠れてしまって見えなくなっているから探しにくいとみた。
図書館で予約はとりあえずしておいた。こういう本は気長に探すに限る。ハードカバーの全集のほうはともかく、岩波少年のほうは、冊数もかなり出ているはずだ。それに出版年が古いので、メルカリとかの最近のオークションよりは古本屋に出ている可能性が高い。
あと、気が付いたのだけれど、「町から来た」と漢字にパッと変換してしまうのでそれで検索してしまうけれど、「町からきた」とひらがなで検索する方がこの本のことがたくさん出る感じがする。
作者は「ボロンコーワ」と「ヴォロンコーワ」表記が多いが、小学館の1983年の松谷さやかさん訳と、岩崎書店の内田莉莎子さん訳のものは「ヴォロンコ」、集英社のマーガレット文庫の北村順治さん訳のものは「ボォロンコーワ」。表記が混在しているが、自分が読んだ本がどれだったかわかっていれば絞り込みやすい。
小学館の少年少女世界の名作37「せむしの子馬」「地球は青かった」と同時収録になっている「町からきた少女」は誰の訳かはわからなかったけど、ソヴィエト編4、ってなっているし、多分同じ話かと。
講談社の「世界名作図書館」21、「機関士白ねずみくん物語」 「町からきた少女」 「ものいわぬ杜子春」のセットのは内田莉莎子さんだから、岩崎書店のものと同じだと思う。
…と調べた感じだと、かなり何回も訳されているから、名作なのは間違いないんだけど、どうもマイナー感が抜けきれない本だ。
コメント
ヴィーチャと学校友だち
ぢょんでんばあさんへ
もちろんですが、外国の話なので全然暮らしぶりが違って、「ズッコケ三人組」とか「あばれはっちゃく」とかよりも好んで読んだ覚えがあります。
「ビーチャ」とか違う表記のこともあるんですが、あれは今でも現役で本があるようです。
町から来た少女は読んだことないですが、ヴィーチャと学校友だち、なつかしいなあ。
算数が苦手で、女の子と男の子のポケットだったかな?絵に描いて考えようとするところが好きでした。
私は算数でもやり方を教わったら機械的にやってしまうので、そういう回りくどい考え方をしたことなくて、すごく新鮮で面白く感じました。
また読んでみたいなあ、町から来た少女も興味あります。