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親の気持ちがわかる日

 私は母とは折り合いが悪かった。大体性格的に合わない親子だったのはちょっと不幸だといえるだろう。

 親に昔、「あなたがいたから私の人生はめちゃくちゃになった」というようなことを言われたことがある。
「子供がいたから、家にいなきゃいけなかった、人生結局何もできなかった」というようなことだったらしい。正直子供にしてみりゃ、頼んで家にいてもらったわけではない。親と仲が悪いということは同じ場所にいるのも苦痛だったのだし、正直「家に帰ってもお母さんがいない」という鍵っ子の友達がうらやましかったほどだ。

 それに、そんなことを私にぶつけたとして、どうしろと。すでに20代になっていた私は、しょうがないのでその話を聞き流した覚えがある。そんなことを子どものせいにしちゃいけないと思うし、親と折り合いが悪いとなるとたいてい「親の気持ちは後からわかるのだ」というタイプの説教を食らわせる人も結構いるのだが、「正直、大人になってもわからないだろうし、わかりたくもない」と思っていた。

 アラフィフになった今、、「お前がいたから人生めちゃめちゃだった」と子供に告げる気持ちはわからないが、なぜ、そういうことを言いたくなったのかはわかった気がする。

 昭和の当時、お勤めをして給料を稼いでくる男性と、配偶者で家にいる専業主婦、子どもが2人から3人というのが「典型的」だった。うちの母は高校卒業後、「腰掛け」、つまり結婚したらやめることを前提にコネで就職、何年か勤めて、実家で暮らし、そのあとお見合いをして結婚が決まったとたんに仕事を辞めて専業主婦になったという経歴を持つ。一人暮らしの経験はない、つまり「自活」したことはないわけだ。

 資格もとらず、手に職もなく、学歴は普通高校卒業。当時の嫁入り修行として、お茶とお花とお琴と和裁洋裁、書道…ぐらいまでは習っていたらしいが、どれもお免状とまではいかなかったらしい。
 多分、あんまり深いことを考えず、「みんなそうしているから」ぐらいで専業主婦をしながら暮らしていて、子どもに手がかからなくなってから就職しようと思ったのが40代半ばからあと、つまりアラフィフ。

 そうしたときに、その選択肢の狭さにびっくりしたのだと思う。
 若い時、新卒時には「好きなところを選べる」ぐらいには選択肢があり、それほど難しい仕事でもなく気楽に勤めて悪くない給料をもらっていた記憶はあっただろうが、事務職の経験のある女性というのはそれほど需要がない。毎年たくさん補充される職業で、それほど特殊な能力が求められないということもあるし、昔ならそろばん、今ならエクセルにワード、そういうようなちょっと便利な特殊技能は母にはなかった。

 店番+経理、保険会社の外交あたりをしていたことがあるのは私も覚えがあるが、スケベおやじなワンマン社長をいなしつつ、10歳ぐらい年上で何かというと嫌がらせをしてくる奥さんをかわしながら勤める店番にはげんなりしたようだし、保険会社の外交はなんせノルマがきつかったらしく、数年でやめてしまった。
 アラフィフともなると仕事というのは求人がかなり少なく、特殊技能もない身の上、これから新しく技能を稼ぎなおそうにも覚えも悪くなっているし、30代の人に勝てるかと言われるとまず書類の時点で負けてるからね、となるとやっぱり若いころに何もしてこなかったということ自体が歯がゆかっただろうし、全部「今更」かと思うと腹立たしかった、それが「子供が小さかった頃に何かしておけばよかった」ということで「お前のせいで人生めちゃくちゃ」発言につながったのだろうな、と思う。

 つまり今、私はそういう状況になっているからこそ、理解出来ちゃった、ということだ。
 私はやたらと転勤が多かった事情もあって、子どもがたとえば1歳ぐらいで保育園に預けることが出来たとしても仕事が続けられたか、と言われると多分無理だっただろうとは思うし(日本国内はともかく、外国も結構いったからね)、うちの夫は「働かなくても家事をしてくれるほうが絶対いい」と力強く請け合ってくれ、なおかつ「俺が家事するぐらいなら、頑張って稼いでくるほうがまし」という発言とともに馬力を出して、たとえば1年に100万とかかかる息子の学費分に十分なぐらい稼いでくれている都合上、「どうしても働きたい」という気分にもならず。

 でもふと気まぐれに、働きにいくとしたら、と思ったとき、チラシだの、ハローワークだのを見ていると自分が応募できそうな仕事が少ないことはよくわかった。それに仕事を取り合うことになるライバルは高校生大学生のバイトの子たち。若さに負け放題だ。
 
 そんなことを考えながら、「あんなこと言われたけど、親の気持ちが今になったらわかるわ」と思ったのは初めてだな、と思って感慨深かった。いつか…もうちょっと母のことが理解できる日が来るのだろうか。

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コメント

子の立場でしかない私には、何とも言えませんが、実の親子でも折り合いが悪いという関係はよく解ります。
母と祖母は実の親子なのに、二人の仲は最後まで相容れない関係でした。母は、祖母が亡くなった今でも、愚痴りますよ~。

専業主婦も、働く女性も、相手の羨ましい所と、疎ましい所と、どっちもあるんじゃないかな?ないものねだりというのかな。
勉強いっぱいしてきて、いい大学出た人は、勉強あまりしてこなかった人の気持ちは解らないだろうし、良い職業と言われる職に就いている人は、誰にでもできる仕事をしてる人を馬鹿にする気持ちはあるでしょうね~
でも、そういう単純な仕事をする人が居なければ、世の中回らないですよね。
テレワークでも、そうですよね、できない人がいるということを解っていない人もいますよね。

うちも母と祖母は相性が悪く、私と母も相性が悪く、、、
この連鎖はなんなんだろうか?と思いましたが、
私と娘たちは仲良くできているので連鎖を断ち切れて良かったと思っています。
私も事情があって10年近く前から専業主婦になり
全ての家事を担っている自負はありますが
でもどこか経済的に夫に頼っていると思うと弱みにも思えて
時には夫の無神経な(悪気はないと思いたい)言葉に
ひとり勝手に落ち込んだりしています。
まこさんのお母さんもアラフィフで何か思うところがあって仕事に就いたのでしょうね。多くの女性が一度は引っかかる部分なのかもしれませんね。

レツゴーさんへ

まあ…うちだけじゃないですよね。親子って他人じゃなくて遠慮がないだけに、こじれやすい気がします。これで他人だったら、もうかかわりを持たないようにして終了ですもんね。
 誰にでもできる「ようにみえる」仕事でも、うまく、長期間やるとなるとなかなかそうはいかないということをわかってくれる人がもっと増えたらな、と思います。

さとちんさんへ

料理とか掃除とか洗濯とかって、実は外注に出すとなると結構お金とるんだよ、ということをわかってくれるかどうか、ですよね。「誰にでも出来る」のはまず「その日だけ」なら何とかなるのとは違うし、何年もやり続けて破綻しないように、家計の無駄が出ないようにとか思うと意外と熟練がいる仕事なのだということをわかってもらえるといいんですけどね。。
 自分が出来ないことをしてくれる人の作業には敬意を払いましょう。そういうことなのに、給料が安いとか高いとかで仕事に上下をつけるのはよくない、と教える人が減ってきている気がします。

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    まこ

    Author:まこ
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