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ところてんを自作

誰でも、自分の中に「やりたいことリスト」をもっているのではないだろうか。
 「絶対やりたい」ではなくとも、「機会があったらやってみたい」「時間が出来たらやってみたい」「お金があったらやってみたい」とか、そういうようなこと。

 もちろんリストの一番上にあるようなものは、実行に至るまでを目標として少しずつ準備したり、心づもりをしたりするから、一番上は少しずつ入れ替わっていく。

 でも、たとえば真ん中のあたりにあるものだったら、どうだろう。
 別に急がなくてもいい、そのうちそうする機会もあるだろう、どうしてもやりたいなら、本気を出せば来週にでも出来てしまうような、そんな何でもない小さなこと。

 私にとって「ところてんを自分で作る」というのはそういう、リストの真ん中あたりにあるやりたいことだった。

 ところてんは、私にとって「甘いもの」の一種だった。これは住んでいる地域の文化によって差が出る。かき氷と同じ場所で売られているものというカテゴリわけだったので、たとえば子どもの頃誰かがそういうお店へ連れて行ってくれるとしたならば、ところてんと一緒にメニューに出てくるものは、わらびもち、白玉、あんみつ、かき氷…とかそういう和風甘いものラインナップ。フルーツとアイスクリームが乗ったクリームあんみつに、ところてんは絶対かなわなかった。

 不思議なことに、母はフルーツが入った四角い寒天はこしらえたし、水ようかんだって作ったし、なんならフルーツ寒天ののっかったケーキまであったぐらいだが(ゼリーケーキと呼ばれていた)、なぜかところてんは作らなかった。そんなわけで私がところ天を買って食べたのは一人暮らしを始めてから。

 売っているところ天は、酸っぱかった。保存のために、ところてんのパックの中には酢が入っているようで、ザルにあけてから洗って黒蜜をかけても、どこか酸味が残るような、そんな味。
 あんみつに入っている四角い寒天の味は知っていたし、ところてんというのは形こそ違え、その味がするものだという知識はあったから、酸っぱいのは何となくダメだった。酢醤油をかける人があるというも知っていたので、しょうゆだけかけて食べて、こんなものかな…ということにしておいた。

 いつか、作ってみたいなあ。そう思ったのだが、当時近所で見かけた「ところてん突き器」は木製だった。
 粗い銅製の金網が貼られたそれは、職人さんの使うような立派なものだったが私は思ったのだ。「絶対カビる」と。

 私の一人暮らしの部屋の台所は収納が少なかった。そして流しの下の物入れはかなり湿気がひどく、サイフォンのコーヒーを入れるときに使う竹べらとか、竹の巻きすとかに私はカビをはやしてしまったことがあった。一度目はいいだろう。でも私は毎日ところてんを作るほど、手作りが好きだろうか、と聞かれたら答えはNOだし、好奇心はあるしやってみたい気持ちもあるが飽きっぽい自分にもう私は気づいていた。

 あいにく、ところてん突きはちょっと高くて2000円近くした。多分作りがよかったのだろう。一人暮らしの安い給料でただ一度だけの楽しみのために2000円出すのはちょっと無理だった。しかも後でカビが生えたのを見て捨てるのがほぼ確定。
 そんなわけで「いつかやってみたいことリスト」の下のほうに入れて早何年。

 今年の夏、見つけた道具はこれだった。なんとプラスチック。製造元は【曙産業】さんというメーカーらしい。

 これならカビない。ちなみにゼリーなんかをこれで作るのもよさそうだ。
 息子はプリンより断然ゼリー派なので喜ぶだろうし、ところてんはローカロリーだし、私のおやつにも。

 ところてんを作って、黒蜜…は使い切るまでに時間がかかってだめになりそうだったので、黒砂糖をかけてみた。
 おいしい…。生クリームと黒砂糖をかけたところ天は、どこかのファミレスのデザートみたいだった。
 黒糖ゼリーにしてもおいしかったし、夫と息子はコーヒー寒天に牛乳いれて、謎の飲み物みたいになってるのが気に入ったみたいだった。

 やっぱり市販のところてんと違って酸味がついていたりしないので、ちょっときなこなんかかけて食べてもおいしい。
 大体のお菓子は市販のもののほうがおいしいので、そんなに作る気にはならないけど、ところてんは家で作った方がおいしかった。

 夫はところてんは甘くないものという文化圏で育ったので、「これ、海藻サラダにいれたらよくない?」と言っていた。
 なるほどー。
 「鍋に入ってるやつとは違うの?」と聞かれたけどそれは「くずきり」では?
 寒天は熱々に煮ると溶けちゃうので、ものが違うと説明はしておいた。

 息子は「細く切る意味が分からない」と言って、押し出す前のを全部欲しがるので、そういう点では要らなかったが、まあ…。
 
 息子もどうも甘いのよりは「そうめんみたいに、つゆで食べたらおいしそう」という感想だったから、お菓子派は私一人に終わりそうだけど、やってみたいことリストの1つがちゃんと出来たのが楽しかった。
 




 

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    まこ

    Author:まこ
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