LuckyDuckyDiary

幻のシュークリーム

転勤が、とても多かった私は、いろいろな街に住んだ。

田舎にも、都会にも住んだけれども、どの町にもたいてい、お菓子屋さんはあった。
和菓子のおいしいお店か、ケーキのおいしいお店。そのなかでも、A町の洋菓子店のシュークリームは格別だった。

かなり小さいシュークリームで、とてもやわらかいクリームがたっぷり入っている。
こんなにクリームが柔らかいシュークリームは、めったにない…というぐらいで、このシュークリームは、かじって食べるものではない。
これはお行儀悪く、全部を口に入れてしまうか、逆に大変お上品にてっぺんのフタ部分をとりのけ、スプーンでクリームをすくって食べるのが正しい。でないとクリームがあふれてこぼれて、えらいことになる、そういうシュークリームだった。

小さいわりにお値段もたかかったし、箱をそーーっと持って帰ってこないと、ゆれたらクリームがちゃぷちゃぷとあふれて、箱の中にまけでてしまうという面倒くささ、それでも食べたいシュークリーム。
 この街に住んでいる間は、そこの洋菓子店のケーキも一通り食べたが、絶対、シュークリームが贔屓だった。

 そこから、数百キロ離れた町に今、住んでいるのだが、シュークリームを食べるたびに、ああ、あのお店のシュークリーム、また食べたいなあ…と思い出す、そんなシュークリーム。

 今年の旅行に、その地方へ行こうか、という話になって、私は観光地よりも、ちょっと珍しい長距離列車よりも、「あの町に寄って、あのシュークリームを食べたい!」と熱烈に希望したわけだった。

 旅行の2日目、見慣れない店も増えて、見覚えがあるような、ないような街を歩いて洋菓子店へ行き、シュークリームを…と思ったら、ない。売り切れたのか、と思って聞いてみたら、「もうやってないんですよ」ということだった。
あの、小さいクリームが柔らかいシュークリームで…というと、そうです、もう今はやっていなくて、と。

 私がどこから、買いに来たのか、何年前にこの街にいたのかを聞いたお店の人はすまなそうだったが、しょうがない。
本当に、幻のシュークリームになってしまった。

 おいしかったなあ、あれ…。
どこかで、似たようなのが食べられるといいのだけれども。
また、いつか…と思えないのが、残念。

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    まこ

    Author:まこ
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