ドルフィン・エクスプレス
何と表現すればいいのだろう。一言で言うと「子供に読ませておくにはもったいない」本だ。
作者の竹下文子さんのシリーズ本【黒ねこサンゴロウの冒険】は、10巻もので、私はこの物語が大好き。
子供の本のくせに(大体3年生ぐらいから読めると思う)、孤独でニヒルで、そしてカッコいい黒猫のサンゴロウが主人公で、1巻目は、人間の男の子が主人公ともいえるので、なんていうか、あるとき、僕に起きた不思議な話、みたいな学習誌の連載ものみたいな感じで、それほどでもないが、2巻から先は、ああ…こんな生き方って、いいかもしれない…。とその世界に浸れるだけの深さがある。
暮らしているのは、猫たちの町。島が点々と散っていて、挿絵は二足歩行の猫。あまりにもファンタジー…と思うかもしれないが、風景の描写や、街の活気が伝わってくるのが、なんとも美しく、まるで外国の知らない町へ遊びに行ったような気がする。
おいしそうな食べ物、パラソルの立った座席が外に並ぶカフェ、月の光に照らされた石畳、そして波の音。
今日紹介しようと思った、「ドルフィン・エクスプレス」は、サンゴロウがいる世界と同じだが、(サンゴロウもちょっと出てくる)主人公は、宅配便船会社、ドルフィン・エクスプレスの配達員の若い兄ちゃん、テール君。サンゴロウよりは人情派で、困った人を放っておけないが、なかなかにガッツがあって、貧乏だけれども、毎日仕事をして、頑張っているサラリーマン。
給料が安いのをぼやいたり、仕事がきつかったり、シフトがきびしかったり、そういう苦労をこれを読む4年生がわかるとも思えないのが、「子供に読ませておくのがもったいない」理由。
これは大人が読んで、あーー。そうだよねーえ。と思う本なのだ。
ちょっとした事件と、ちょっといい話が、島の生活が、季節によって変わっていく様子と共に描かれている。
貧困、ギャンブル、泥棒、孤児、詐欺、老人問題なんかがちょっとずつ書かれていて、この世界にもいろいろあるのがわかる。
でも、ここの住民も、生きているのだ、毎日毎日。
ページを閉じても、島の生活がきっとどこかで続いている、そんな感じがしてくる。
きっとどこかに…今日も港ではゴンじいさんが仕事をしていて、港の売店のおばちゃんはパンを焼き、港に船をつけるのが下手なヨキ君はテールに難しい場所の配達を交代してもらい、一番うすぼんやりな配達員は、今日も伝票にハンコをもらい損ねる。
ほんっとうにおいしい、あの店の小エビのピザは1日限定50枚だし、目つきのよくない男たちが、裏道のバーにはたむろしてギャンブルをしているのだし、リゾートアイランドの石畳では、きれいなドレスを着たお嬢様たちが、今年の流行りのペットのトカゲを散歩させているのだ。
だから…。私は時々、この本を開いて、島に遊びに行く。
島の…。白い壁にプルメリアの影がうつるリゾートホテルで、レモネードなんか飲みながらなら、嵐の話を読むのも、悪くない(サンゴロウのシリーズの場合)。それから、街へ出て、石畳を歩きながら、ショーウィンドウをひやかす(テール君のシリーズの場合)そぞろ歩きを。
どこがモデルなんだろうね、この島は。
子供の読み物ということみたいだけど、これは、本当に気持ちのいい本。いいところだけ取って、いらないところを抜いてあるから、子供用にもなるぐらい短い本だけれども、ノベルスぐらいの、何があるんだろうこれ。えーっと、固さ?歯ごたえ?
全体の構成がしっかりしていて、「こどもだまし」な感じがしない。
もちろん表現は、子供にもわかるようにしてあるから、子供用なのは、わかる。でも…。
家具でいうと、小さい子供が食卓に座れるように、高くなっているイスなんだけど、座面と足を置くところの高さをかえることで、大人になるまで使えます、というたっかい(三万円近くする)椅子。あれと似てると思う。
薄いし、軽い読み心地なので10冊以上あっても、大人ならなんのその、で読めてしまうと思うので、図書館でぜひ、おすすめ。
作者の竹下文子さんのシリーズ本【黒ねこサンゴロウの冒険】は、10巻もので、私はこの物語が大好き。
子供の本のくせに(大体3年生ぐらいから読めると思う)、孤独でニヒルで、そしてカッコいい黒猫のサンゴロウが主人公で、1巻目は、人間の男の子が主人公ともいえるので、なんていうか、あるとき、僕に起きた不思議な話、みたいな学習誌の連載ものみたいな感じで、それほどでもないが、2巻から先は、ああ…こんな生き方って、いいかもしれない…。とその世界に浸れるだけの深さがある。
暮らしているのは、猫たちの町。島が点々と散っていて、挿絵は二足歩行の猫。あまりにもファンタジー…と思うかもしれないが、風景の描写や、街の活気が伝わってくるのが、なんとも美しく、まるで外国の知らない町へ遊びに行ったような気がする。
おいしそうな食べ物、パラソルの立った座席が外に並ぶカフェ、月の光に照らされた石畳、そして波の音。
今日紹介しようと思った、「ドルフィン・エクスプレス」は、サンゴロウがいる世界と同じだが、(サンゴロウもちょっと出てくる)主人公は、宅配便船会社、ドルフィン・エクスプレスの配達員の若い兄ちゃん、テール君。サンゴロウよりは人情派で、困った人を放っておけないが、なかなかにガッツがあって、貧乏だけれども、毎日仕事をして、頑張っているサラリーマン。
給料が安いのをぼやいたり、仕事がきつかったり、シフトがきびしかったり、そういう苦労をこれを読む4年生がわかるとも思えないのが、「子供に読ませておくのがもったいない」理由。
これは大人が読んで、あーー。そうだよねーえ。と思う本なのだ。
ちょっとした事件と、ちょっといい話が、島の生活が、季節によって変わっていく様子と共に描かれている。
貧困、ギャンブル、泥棒、孤児、詐欺、老人問題なんかがちょっとずつ書かれていて、この世界にもいろいろあるのがわかる。
でも、ここの住民も、生きているのだ、毎日毎日。
ページを閉じても、島の生活がきっとどこかで続いている、そんな感じがしてくる。
きっとどこかに…今日も港ではゴンじいさんが仕事をしていて、港の売店のおばちゃんはパンを焼き、港に船をつけるのが下手なヨキ君はテールに難しい場所の配達を交代してもらい、一番うすぼんやりな配達員は、今日も伝票にハンコをもらい損ねる。
ほんっとうにおいしい、あの店の小エビのピザは1日限定50枚だし、目つきのよくない男たちが、裏道のバーにはたむろしてギャンブルをしているのだし、リゾートアイランドの石畳では、きれいなドレスを着たお嬢様たちが、今年の流行りのペットのトカゲを散歩させているのだ。
だから…。私は時々、この本を開いて、島に遊びに行く。
島の…。白い壁にプルメリアの影がうつるリゾートホテルで、レモネードなんか飲みながらなら、嵐の話を読むのも、悪くない(サンゴロウのシリーズの場合)。それから、街へ出て、石畳を歩きながら、ショーウィンドウをひやかす(テール君のシリーズの場合)そぞろ歩きを。
どこがモデルなんだろうね、この島は。
子供の読み物ということみたいだけど、これは、本当に気持ちのいい本。いいところだけ取って、いらないところを抜いてあるから、子供用にもなるぐらい短い本だけれども、ノベルスぐらいの、何があるんだろうこれ。えーっと、固さ?歯ごたえ?
全体の構成がしっかりしていて、「こどもだまし」な感じがしない。
もちろん表現は、子供にもわかるようにしてあるから、子供用なのは、わかる。でも…。
家具でいうと、小さい子供が食卓に座れるように、高くなっているイスなんだけど、座面と足を置くところの高さをかえることで、大人になるまで使えます、というたっかい(三万円近くする)椅子。あれと似てると思う。
薄いし、軽い読み心地なので10冊以上あっても、大人ならなんのその、で読めてしまうと思うので、図書館でぜひ、おすすめ。